東京女子医大の医師100人超が退職していた、と衝撃的なニュースが2021年4月20日にありました。
東京女子医大といえば、2020年には「夏のボーナス支給ゼロ」を打ちたてたため、看護師約400人が退職したのも有名です。
大学病院という巨大な組織といえども、僕自身の医師生活の中で、約400人の看護師が一気に退職したり、ましては100人を超える医師が退職するなんて聞いたことがありません。
何が起こったのか、なぜ医師は辞める決心ができたのか、医師目線で記事にまとめたいと思います。
はじめまして、メンタルバイザーのあさひです。
児童から大人まで幅広く診てます。
とある場所で
・精神科医歴10年以上
・児童相談所で児童と親のサポート歴5年以上
の勤務をしてます。
精神科医としてのモットーは「その人にとってよりよい人生を過ごしてもらいたい、と考えて治療すること」
東京女子医大で100人超の医師が退職したニュース
今回のニュースをまとめると「医師の給料が減るから」です。
ポイントとなるのはこちらです。
・「研究日」に医師の「外勤」をあてる慣例があったが、国が推進する「医師の働き方改革」に合わせて、今年3月末で廃止する
・東京女子医大に勤務する医師は「週39時間」の労働義務を負う
・「外勤」を継続する医師には「週32時間」勤務の選択肢を用意するが、給与は相応の水準とする
スクープ!東京女子医大で医師100人超が退職(東洋経済ONLINE)より
専門用語がありますので説明します。
多くの大学病院で勤務する場合は、週4日を大学病院で勤務し、週1日が「研究日」となります。
「研究日」とは、研究のために使う日、となっていますが、大学病院以外の病院で勤務する医師がほとんどです。
大学病院で働く医師は、大学病院の給料とアルバイトの給料で生活をしています。
- 「研究日」に医師の「外勤」をあてる慣例があったが、国が推進する「医師の働き方改革」に合わせて、今年3月末で廃止する
-
→「医師の働き方改革」にあわせて、医師のバイトを禁止します、という意味です。
- 東京女子医大に勤務する医師は「週39時間」の労働義務を負う
-
→今まで週4日(1日8時間として)の大学病院勤務を、週5日間にします、という意味です。
- 「外勤」を継続する医師には「週32時間」勤務の選択肢を用意するが、給与は相応の水準とする
-
→どうしてもバイトをしたい医師は、大学病院の勤務を週4日でもいいですが、給料は減らしますよ、という意味です。
「医師の働き方改革」という大義名分をもとに、医師の外勤(医師が行うアルバイト)に東京女子医大はメスをいれてしまったのですね。
東京女子医大側からすればなにか理由はあるのかもしれませんが、ニュースの中にも書かれていたように『医師の人件費コスト削減』と受け取ってしまう内容です。
医師がアルバイトをする理由
医師の給料は高給であるし、アルバイトをしなくても十分なのでは、と思われるかもしれません。
僕も大学病院で働いていたことがありますので、アルバイトをしなくていいなら、したくはないなと思ってました。
ですが、大学病院に勤めている医師は大学病院からの給料はとても安いで、生活していくためにはアルバイトをしなくてはならないのです。
30歳の場合、東京女子医大の基本給は25.9万円、東京医大:31.1万円。これに対して、日赤医療センター:41.1万円、がん研有明病院:49.7万円。(東京医労連調査部「賃金・労働条件実態 2020年度版」より)
スクープ!東京女子医大で医師100人超が退職(東洋経済ONLINE)より
僕が大学病院に務めていた時の月の基本給は30万円いくか、いかないかぐらいでした。ここから大学病院にお金を支払ったり、勉強のための医学書(1冊が高額です)を買ったり、学会に行ったりするお金がどんどん出ていきます。
大学病院からだけのお給料では勉強にあてるお金も足りないため、多くの医師は週に1回程度はアルバイトをします。
大学病院で働く医師達の気持ち
大学病院で働く医師は『勉強がしたい』からです。
患者さんからしたらスーパードクターだろうが、研修医だろうが「医師は医師」です。
ですが、医師になりたての頃は自分が医師としてやっていけるのか、患者さんに迷惑をかけないか、そんな不安でいっぱいです。
不安な気持ちをなんとかするために研修医(医師になりたての医師)は、大学病院や大きな総合病院で医師としての経験や知識をどんどん積みたい、早く一人前の医師として自信をつけたいと思ってます。
このような不安いっぱいの若手医師にとって大学病院は経験を積むには最適な場所の一つです。
大学病院は「臨床・教育・研究」と三拍子そろっており、全国的に有名な医師が多く在籍しています。
医師になりたての研修医や若手の医師にとって、大学病院での仕事はとても勉強になり、有意義な医師生活が送れるのです。
ましてや東京女子医大は日本でも有名な大学病院ですから、自分自身のスキルアップや研究をしていきたいと思う若い医師が多いと思います。
とはいえ、医師も人間です。
医師自身の生活・人生があるため、今回の給料削減は耐えることができなかったのだと思います。
辞めていった医師たちも志半ばで退職をしなくてはならず、無念だったと思います。
日本の医療にとっても、もったいなく残念なニュースですね。
医師が退職を決めることが出来る理由
もし今回のニュースが一つの会社の出来事だったらどうなっていたでしょう。
おそらく会社の決定に従うことしかできない人のほうが多いと思います。
ですが、医師は違います。
医師は国家資格である医師免許を持ってます。
医師という資格があれば、自由に雇ってもらえる病院を探すことができますし、自分自身で開業していくこともできます。
また、転職をしたら違う業務になる可能性が出てくる会社員とは異なり、医師はこれまで積み上げてきた経験をいかして仕事をすることができます。
このように日本において最強の資格:医師免許があるため、今回退職を決めた医師達も新しい病院で活躍するのだろうと思います。
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